【理学療法士が語る】炎鵬、脊髄損傷からの復活劇。十両復帰の挑戦にエールを

理学療法士監修の力士ががっぷり四つで、組んでいる相撲のイラスト。

相撲界の「小さな巨人」が再び土俵へ

大相撲初場所、結びの一番へ向けて熱気が高まる国技館のなか、ひときわ大きな拍手で迎えられる力士がいます。かつて幕内を沸かせた「ひねり王子」こと、炎鵬関です。

現在、彼は幕下の位置で戦っています。大相撲に詳しくない方からすれば「番付が落ちてしまったのか」と思われるかもしれませんが、私たち理学療法士や、彼の怪我の重さを知る者からすれば、今彼が土俵の上で相撲を取っていること自体が、計り知れない努力の結晶であると感じずにはいられません。

今回の記事では、炎鵬関が向き合ってきた脊髄損傷という課題、そして今場所の戦い、さらにその先にある「親方」としての未来への願いを、医療従事者の視点から綴ります。

炎鵬を支えた「脊髄損傷」への向き合い方

力士にとって怪我は常に隣り合わせのものですが、炎鵬関が直面した「脊髄損傷」は、復帰までに非常に緻密なプロセスを要する状態です。

脊髄損傷とはどのような状態か

脊髄は、脳からの指令を全身に伝える、いわば「情報の幹線道路」です。ここがダメージを受けると、筋力の低下や感覚の変化など、アスリートにとって生命線ともいえる身体機能に影響を及ぼします。

理学療法士として多くの症例を見てきましたが、脊髄にダメージを負った場合、まずは「日常生活をいかにスムーズに送れるか」がリハビリの土台となります。100kgを超える巨体がぶつかり合う相撲という過酷な世界へ再び戻ることは、本人の「もう一度相撲を取りたい」という並外れた意志がなければ、成し得ない道です。

向き合ってきた日々の重み

彼は怪我の後、昨日まで当たり前にできていた動きができないという、神経系特有のもどかしさと向き合ってきたはずです。骨折などの組織の修復とは異なり、神経機能の再構築には時間がかかり、日々のコンディションも非常に繊細です。彼は一年以上にわたって、その地道な変化を積み重ね、一歩ずつ土俵へと近づいてきたのです。


初場所の戦い:十両復帰への一歩

長期の休場を余儀なくされ、番付を序ノ口まで落としながらも、炎鵬関は決して諦めませんでした。そして迎えた令和8年(2026年)初場所。彼の番付は幕下まで回復していました。

7戦全勝への期待

今場所、幕下の上位に位置していた炎鵬関。ここで7戦全勝を果たせば、翌場所での十両復帰(関取復帰)が現実味を帯びる、非常に重要な局面でした。

連勝を重ねる彼の姿に、日本中のファンが「関取返り咲き」を期待しました。理学療法士である私も、彼の土俵上でのキレのある動きを見て、「リハビリテーションを通じて、身体の協調性や瞬発的な反応速度をここまで高めてきたのか」とそのひたむきな努力に感銘を受けました。

13日目の接戦、それでも途切れない希望

しかし、勝負の世界は常に厳しさが伴います。13日目の対戦、全勝を守れば十両復帰が目前という一番で、惜しくも土がつきました。全勝優勝という形こそ逃しましたが、幕下上位という厳しい番付で勝ち越しを決めた事実は揺るぎません。十両という大きな扉は、間違いなく彼の目の前にあります。


理学療法士の視点:なぜ「今」チャンスを掴んでほしいのか

私が炎鵬関に、次の場所でどうしても十両復帰を決めてほしいと願うのは、単なるファンの心理だけでなく、一人の専門職として、彼がこれまで積み上げてきた「リハビリテーションの成果」が最高の結果として報われてほしいという強い思いがあるからです。

努力の結晶としてのパフォーマンス

炎鵬関のような小兵力士が、自分より遙かに大きな相手と渡り合うためには、卓越したバランス能力と、瞬時に力を伝える神経系の鋭さが不可欠です。脊髄の負傷を乗り越え、今のしなやかな動きを取り戻すまでに、彼がどれほどの反復練習と、緻密なコンディショニングを積み上げてきたかは、計り知れません。

リハビリの世界では、「ダメージを負った機能をどうカバーし、全身を連動させるか」という高度な身体操作がテーマとなります。今の彼の相撲は、まさにその「身体の再構築」の結果であり、アスリートとしての技術が非常に高い次元にあることを示しています。

努力の結実が「形」になることを願って

そして、彼のこれからの相撲人生を願う上で、非常に大切な要素が「親方の権利(名跡)」です。大相撲の世界で、引退後に後進を育成する指導者になるためには、関取としての通算成績など、厳しい規定をクリアする必要があります。

  • 幕内通算20場所以上
  • 十両以上の関取通算30場所以上(※特例措置もあり)

脊髄損傷という険しい山を乗り越えて戻ってきた彼には、その不屈の歩みを「一生の証」として形に残してほしいと切に願っています。炎鵬関は、あと一場所、十両以上の番付で場所を終えることができれば、この条件を満たし、相撲の技術と精神を次世代に繋ぐ権利を手にできると言われています。

彼が土俵で見せてくれる「諦めない姿」は、多くの人に勇気を与えてきました。その彼自身が、これからも相撲界に深く関わり、その貴重な経験を若い力士たちに伝えていける道が拓けること。それこそが、彼が積み重ねてきた地道な努力に対する、最高の後押しになるのではないでしょうか。


炎鵬の姿から私たちが学べること

炎鵬関の歩みは、現在リハビリに励む多くの方々や、それを支えるご家族にとっても、大きな希望の光となります。

1. 前向きな意志が身体に与える影響

身体機能の回復には、徹底したトレーニングに加え、「もう一度目的を達成したい」という強い意志が大きな役割を果たします。炎鵬関のケースは、脳が身体の動きを再学習するための集中力と、継続することの価値を私たちに教えてくれます。

2. 目標(生きがい)を尊重するリハビリ

理学療法士は安全を第一に考えますが、それと同じくらい、本人が人生で何を大切にしたいかという「目標」を尊重することも重要です。リスクを管理しながら、最大限の可能性を引き出す。彼の復活は、医療現場における「本人の意向を尊重するリハビリ」の真髄を再確認させてくれます。


結びに:次場所、十両の土俵で「炎鵬」の名を

初場所での全勝優勝は逃しましたが、炎鵬関が見せた相撲は、結果以上の感動を与えてくれました。十両復帰はもう目前です。

次の場所、彼が再び関取として土俵に上がる姿を想像するだけで、胸が熱くなります。体は小さくても、その不屈の精神は誰よりも巨大です。炎鵬関、まずは激闘を終えた体をしっかりとケアし、次への備えを整えてください。

理学療法士として、一人のファンとして、あなたの努力が確かな形となり、未来へ繋がることを心から応援しています。満員の国技館に「炎鵬!」の声援が響き渡るその瞬間を、私たちは待っています。


読者の皆様へ:リハビリのヒント

この記事を読んでくださっている方の中には、何らかの怪我や不調と戦っている方もいらっしゃるかもしれません。炎鵬関のように一歩ずつ前に進む大切さは、誰にとっても同じです。当サイトでは、家庭で取り組める自主トレ素材や、身体を整えるコツを公開しています。ぜひ、一緒に前向きな体づくりをしていきましょう!


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